食物アレルギーとは
アレルギーのしくみについてはこちらで説明していますが、今回は食物アレルギーに焦点を当ててお話します。
日本では現在2人から3人に1人が何らかのアレルギーを持っていると言われています。割合的にもかなり多く珍しいものではありません。その中でも食物アレルギーは子供に多く見れることが多く年々増加傾向にあります。
アレルギーの起こる仕組み~免疫の勘違いによっておこる
私たちの周りにはウイルスや細菌など様々な病原体がたくさんあふれています。これらの悪さを働く病原体が体に侵入してきたときに免疫機能が病原体と戦ったり追い出したりと私たち自身の体を守ってくれる働きをします。
ですが、この免疫機能が未完成であったり異常があり正常に働いていなかったりすると体に対して害のないものにまで危険だと判断し攻撃してしまうことがあります。その勘違いのことをアレルギーといいます。
最近ではこのアレルギーになる人が増えてきています。その理由としては周りの生活環境が清潔に保たれることが増えてきたため感染症が減ったこと、このことにより病原菌と戦う機会が減ったことが、このような現象に深く関わっていると言われています。
アレルギーの原因
原因とされているものは食べ物や花粉などに含まれている特定のたんぱく質でこれらのことをアレルゲンといいます。
アレルゲンの種類によってどのような症状が出るのかは人によってさまざまです。
症状
症状は体の様々な部位や器官に現れ、症状の強弱は人によって違います。
皮膚
かゆみ、赤み、むくみ、蕁麻疹(じんましん)など
粘膜
口や唇:痛み、かゆみ、腫れなど
眼:かゆみ、むくみ、充血、涙目、腫れなど
鼻:くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど
呼吸器
息苦しさを感じる、ゼーゼー・ヒューヒューした呼吸をする、喉のイガイガ感や腫れ・かゆみがある、咳が出るなど
消化器
腹痛、吐き気、嘔吐(おうと)、下痢、血便など
全身
アナフィラキシーショック:上記の症状がいくつか同時に現れたり、意識がもうろうとしたり、口唇や顔面が青白く血色が悪くなったりなど命の危険にかかわる状態
食物アレルギーの特徴
アレルゲンが含まれる食べ物の中でアレルギーを特に引き起こしやすいとされる食べ物が3つあります。
卵、牛乳、小麦とこれらが原因とされる食べ物のおよそ70%を占めています。
就学前に発症した場合は成長に伴い克服されていく場合が多いですが、ある程度大きくなってから発症した場合やナッツ類が原因のアレルギーに関しては治癒が困難と言われています。
原因とされる食べ物(割合の多い順)
卵、牛乳、小麦、落花生、果物類、魚卵、甲殻類、木の実類、魚類、そば、大豆
日本の表示基準
日本ではアレルギー罹患者の多く、重篤化しやすい食べ物を「特定原材料」と指定し食品の外袋などパッケージに表示することを義務付けています。また注意する必要があるものを「特定原材料に準ずるもの」として表示することを促しています。
特定原材料(7品目)→表示が必須
卵、乳製品、小麦、そば、落花生、エビ、かに
特定原材料に準ずるもの(20品目)→表示をすすめている
オレンジ、キウイ、バナナ、桃、リンゴ、カシューナッツ、クルミ、大豆、ゴマ、山芋、マツタケ、いか、あわび、いくら、鮭、サバ、鶏肉、牛肉、豚肉、ゼラチン
食物アレルギーのタイプ
症状の特徴やアレルゲンから5種類に分けることができます。
1.即時型
〖特徴〗原因とされるものを食べてから2時間以内に症状が出る。皮膚症状が出ることが多い。
〖原因となる食べ物〗年齢によって変わっていく
〖好発年齢〗生まれてすぐ~大人
〖重篤化のリスク〗高い
〖自然治癒〗ナッツ類、甲殻類、そばは可能性が低い
2.食物依存性運動誘発アナフィラキシー
〖特徴〗原因となる食べ物を食べた時間以内に運動して後アナフィラキシーが引き起こされる。
〖原因となる食べ物〗小麦、甲殻類など
〖好発年齢〗小学生~大人
〖重篤化のリスク〗とても高い
〖自然治癒〗難しい
3.口腔アレルギー症候群
〖特徴〗口の周りが赤くなってかぶれたり、かゆくなる。花粉症の人が交差反応を起こすことで症状が現れる。
〖原因となる食べ物〗果物、野菜など
〖好発年齢〗小学生~大人
〖重篤化のリスク〗低い
〖自然治癒〗難しい
4.新生児・乳児消化管アレルギー
〖特徴〗下痢や嘔吐、血便などの消化器症状が現れる。
〖原因となる食べ物〗粉ミルク
〖好発年齢〗生まれてすぐ~1歳ころ
〖重篤化のリスク〗低い
〖自然治癒〗可能性が高い
5.食物アレルギーに関与する乳児アトピー性皮膚炎
〖特徴〗顔や頭部に痒いを伴う湿疹ができ、症状が長引く。
〖原因となる食べ物〗卵、乳製品、大豆、などなど
〖好発年齢〗生まれてすぐ~就学前
〖重篤化のリスク〗低い
〖自然治癒〗可能性が高い
交差反応とは
アレルギーにはほかの食べ物の中に似た形をしたアレルゲンが含まれていることがあり、その食べ物にもアレルギー反応を起こすことがあります。この性質を交差抗原性といい、この反応のことを交差反応といいます。
例えば、花粉症の人がリンゴでアレルギーを起こしてしまったり、桃にアレルギーのある人が梨でアレルギーを引き起こしやすいことがあります。これは花粉とリンゴ、桃と梨に交差抗原性があるためです。
特定原材料(7品目)
卵(ケーキ、ハンバーグ、マヨネーズ、天ぷらなど)
栄養価が高く調理しやすい食材のため口にする機会が多く、それに伴い罹患者も多いのが実態です。卵は小麦やそばに比べ重篤化のリスクは低いですが、発症者は多いです。就学前には治癒する場合が多いのも特徴です。
鶏の卵だけではなく、アレルゲンはうずらなど鳥の卵全般に含まれているため注意が必要です。加熱をしっかりすることで発症は弱まるということがわかっています。
卵アレルギーを持つ人は鶏肉アレルギーの心配にあると思います。また卵というと魚卵もあります。ですが魚卵や鶏肉とは交差抗原性が低いのでそれらに反応が出る心配はないそうです。菓子類に「卵殻カルシウム」がありますが、タンパク質が含まれてはいないので大丈夫です。
卵はケーキやてんぷらの衣、ハンバーグのつなぎなど形を変え様々な食品に使用されているため食品を選ぶ際には気を付けましょう。
代替表記
たまご、玉子、タマゴ、鶏卵、エッグ、あひる卵など
メモ
ハンバーグのつなぎの代わりに摩り下ろしたレンコンやジャガイモ、揚げ物の衣には水溶き片栗粉、ケーキにはベーキングパウダーが卵の代わりに使えますよ。
乳製品(ヨーグルト、バター、チョコレート、ケーキなど)
生後すぐから口にする機会がある粉ミルクは牛乳が主成分のため生後まもなくから乳児期のアレルギーの原因になる場合が多いです。この乳製品のアレルギーは成長に伴い治る場合が多くみられます。卵と違う点は加熱したり発酵をしても発症する力は弱まらないので口にする際には要注意です。
商品の表示には、乳化剤や乳酸菌などの「乳」と文字の入ったものがありますが、それらにはアレルゲンとなるたんぱく質の成分は含まれないため乳製品とは別物ですので口にしても問題ないです。乳糖という甘味料も問題ありません。
牛乳といえば牛、牛肉も心配されるかと思いますが、交差抗原性は低いです。牛乳を発酵したものから作られたバターは避けたほうが安心ですが、カカオバターはカカオの油脂から作られているので影響ありません。
牛乳はカルシウムが豊富に含まれている大事な栄養源ですが、小魚やホウレン草、小松菜などを牛乳の代わりに取り入れるようにしてみるとよいでしょう。
代替表記
生乳、牛乳、特別牛乳、成分調整牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、バターオイルなど
牛乳を飲むとおなかを壊しやすくなるのはなぜ?
牛乳を飲むと腹痛を起こしたり下痢をする場合もありますがこれはアレルギーとは関係のないこともあります。牛乳の成分である乳糖を分解できないために起こる症状の可能性が高いです。同じ乳製品でもヨーグルトやバターは無症状の場合もありますが、これは発酵の経過の中で乳糖の一部が分解されるためであるといわれています。
小麦(パン、うどん、パスタ、ケーキ、カレーなど)
小麦は和洋中さまざまな料理に使用されています。未就学児よりも18歳以上の世代でのアレルギー原因では最も発症しやすく、アナフィラキシーを起こすとも多いです。幼い頃に発症した場合は成長とともに治ることが多いです。小麦を食べた後の運動で食物依存性運動誘発アナフィラキシーが突然起こる場合もあります。
小麦は幅広く使用されているので口にする機会も多いと思いますが、米粉やグルテンフリーの食品もあるので代用していくとよいでしょう。麦茶や菓子類に使われる麦芽糖は大麦から作られており、交差抗原性は低いため食べても問題ないことが多いです。また味噌や醤油にも小麦が原料となっていますが発酵段階でたんぱく質が分解されるために食べても大丈夫なことが多いです。
代替表記
こむぎ、コムギなど
注意!小麦粉でダニアレルギー?
コムギアレルギーではないのに小麦粉が使われている料理を口にすると症状が出てしまうことがあります。これは小麦に湧いたダニが原因です。ダニアレルギーではなくても一度に多量口にすると症状が起こりやすくなるため、開封したら早めに使い切るか冷蔵庫で保存するなど高温多湿を避け保管法などに気を付けましょう。特にお好みやたこ焼き粉などのミックス粉はダニが湧きやすくなるのでさらに注意が必要です。
そば(そば茶、こしょう、パン、そばまんじゅうなど)
そばのアレルゲンはとても強力なためわずかな量でも重篤化する場合があります。アレルゲンの力は加熱しても弱まりません。卵や乳製品のアレルギーとは違ってそばアレルギーは治らない場合が多いです。
そばのアレルゲンは熱に強く水に溶けやすいので、そばのゆで汁でうどんをゆでたものを食べたり、そばを茹でているときの湯気を吸ってしまっただけでアレルギーを起こす場合もあります。
代替表記
ソバ
そば殻入りの枕にも要注意!
そばのアレルゲンは触れただけでも症状が起こってしまいます。そば殻入り枕を使用した場合でも重篤化など症状が悪化する人もいるので注意しましょう。
落花生(ピーナッツバター、カレールー、チョコレート菓子類、ドレッシング、ケーキなど)
そばと同様わずかな量で重篤なリスクを起こす可能性のある食品です。実を食べなくても殻に触れただけでアレルギーを引き起こしてしまう危険があります。また怖いところが、卵のように加熱することによってアレルゲンの力が弱まるものとは真逆で、加熱によってアレルゲンの力が増強してしまうので要注意です。揚げたり茹でるよりも煎ったほうが高い熱を加えることになるそうです。
アレルギーの強さが知らわれているので機内食や学校給食ではナッツ類の使用が控えられています。
代替表記
ピーナッツ
えび・かに(のり、サプリメント、かまぼこ、ちくわなど)
えびやかにの甲殻類同士の交差抗原性は高く、えびアレルギーのおよそ60%はカニアレルギーも併発する場合があります。貝類やイカも同じアレルゲンを持っていますが交差抗原性は高くなく、問題ない人が多いです。
このアレルギーになる人は就学前から増え、発症すると治りにくいのが特徴です。また小麦と同様に食物依存性運動誘発アナフィラキシーを引き起こしやすいのも特徴です。
ナッツ類と同様に熱に強く煮込み料理やスープ、湯気を吸っても症状が出てしまう場合もあります。食べるだけではなく、肌に触れるだけでも蕁麻疹が出てしまう人もいますし、甲殻類のみならず、ダニやゴキブリとも交差抗原性があるためダニのし甲斐が含まれているほこりなどにも注意していきましょう。
代替表記
エビ、海老、カニ、蟹